東京ステーションホテル(千代田区丸の内1、TEL 03-5220-1960)が11月2日、開業100周年を迎えた。
1915(大正4)年、急増する内外の賓客を迎えるために東京駅構内に誕生した同ホテル。多くの文豪や文化人に愛され、大正・昭和・平成と日本の1世紀を見つめ続けてきた。2003年に国の重要文化財として認定され、「使い続ける文化遺産」として営業を続ける。館内の至る所には宿泊客のエピソードがちりばめられている。
松本清張は旧ホテル209号室(現2033号室)の窓から列車が行き来するホームを眺めるうちに代表作「点と線」のトリックを思い付いたという。川端康成は新聞の連載小説「女であること」執筆時に1カ月ほど317号室に滞在し、小説にはその部屋から見える改札口付近の様子が描かれている。江戸川乱歩も「怪人二十面相」の舞台に同ホテルを選んでおり、鉄道をこよなく愛した随筆家で鉄道紀行「阿房列車」シリーズの作者、内田百けん(けんは門構えに月)も同ホテルを定宿としていた。ホテルの各客室には、こうした文豪たちとの交流の歴史を残す意味で原稿用紙柄のメモ用紙が備え付けられている。
館内のバー「オーク」とカフェ&バー「カメリア」では、100周年記念カクテルの人気投票が行われ、バーテンダー大野琢治さん考案の「1915」が優勝。日本酒をベースにココナツリキュールで甘みのバランスを調えた、ホテルカラーの濃藍色(こいあいいろ)が印象的なカクテルで、圧倒的大差で1位に選ばれたという。同ホテルには東京駅開業75周年を記念して考案された「東京駅」という赤レンガ色の名物カクテルがあり長く人気を呼んでいるが、新たに「1915」が加わり、新旧2つのカクテルが同ホテルバーの新しい「顔」になる。
開業100周年を記念して、さまざまな企画も用意する。1日3組限定の宿泊プラン「ヒストリカルツアー1915-2015」(1泊1室1人4万4,061円~、2人5万5,282円~、12月18日まで)では全長330メートルを超える客室廊下をギャラリーに見立て、東京駅や鉄道、ホテルにまつわる写真、図面、絵画などの資料107点を展示。専用アプリがインストールされたタブレットで遊覧できる。ほかにも館内レストランやバー・ラウンジではそれぞれ独自の100周年記念メニューを用意する。
100年目となった当日は南北のドームに「祝賀」と呼ばれる赤色の照明が施され、多くの通行人が一日限りのライトアップにスマートフォンやカメラを向けていた。