日本橋エリアの老舗店などに現在、各店独自のひな人形・ひな道具が展示されている。
京漆器の老舗「象彦」東京店(日本橋本町2、TEL 03-3510-1751)は、創業350周年を記念して制作したひな道具を展示している。熟練した指物師・塗師・蒔絵(まきえ)師の職人が現代最高の技術を駆使し、厳選したヒノキ材で制作した三棚や貝桶、高杯などのミニチュア道具類はひとそろえ1,300万円。一品ずつ販売しており、「1つずつそろえていくのを楽しみにする方もいる」という。「昔は良家の女子の誕生にひな人形やひな道具をあつらえたので、漆器職人が腕を磨く機会があり、江戸や明治の名品が残っている。現代ではそのような機会が少ない」と西村利彦店長。「平成の名品と言われるひな道具に職人が取り組むことで技術を伝承していきたい」とも。
同店では併せて、京都の老舗人形司「桂甫作 安藤人形店」のひな人形を展示。段飾りや親王飾りが並ぶ中、人形職人の安藤忠彦さんが妻・啓子さんの還暦を祝うために制作した深紅の衣装の「還暦雛」も。東京での展示は初めてだという。
1653年創業の紙商・小津和紙(日本橋本町3、TEL 03-3662-1184)は、和紙で作ったひな人形を展示する。同社が主催する折り紙教室の講師・麻生玲子さんによる作品は、色とりどりの「友禅紙」を何枚も重ね、ひなの着物を再現。「友禅紙は着物を染めるのと同じ技術で加工した和紙。もともと人形に着物を着せるために作られたといわれる」と同社の西本幸宏さん。その他、得意客がフィルムケースやハマグリの殻に和紙を貼って作ったという作品も展示する。
1590年創業のうちわ・扇子店で浮世絵の版元としても知られる「伊場仙」(日本橋小舟町、TEL 03-3664-9261)が展示するひな人形は地域の商家などが貸し出した昭和のもの。日本橋は関東大震災や戦災で一帯が焼けており、現存する人形の多くは戦後のものだが、同社オーナー・吉田家のひな人形は人形箱の裏にかつて日本橋室町近辺ににぎわっていたという人形市「日本橋十軒店(じっけんだな)」と銘記されており、1932(昭和7)年以前に作られたと推測される。
そのほか、三井記念美術館は「三井家のおひなさま」を、京都の西陣織メーカー「渡文」東京店は現代アートで表現した「京のおひなさま」などを展示する。
展示は3月3日まで(三井記念美術館のみ4月3日まで)。