トークショー「シン伊勢商人をめざせ!三井高利に学ぶ商売繁盛の秘訣」が2月4日、三重テラス(東京都中央区日本橋室町2丁目)で開催された。
日本橋三重テラスでトークショー 講師二人が伊勢商人と三井高利語る
ステージでは三重県産業支援センター理事長の更屋英洋さんの挨拶に続き、著書「会計の世界史」で知られる作家で公認会計士の田中靖浩さんと、万協製薬(三重県多気郡)社長で「秘密の経営術」などの著書がある松浦信男さんが登壇。個性的な二人だが、普段から交流があり、それぞれのトークの後の対談では、あたかも漫才を見ているようなかけあいで会場を沸かせていた。
三重県出身である田中さんと、活動拠点にしている松浦さんにとって三井グループの礎を築いたとされる三井高利はビジネスの大先輩。田中さんは「三井高利をテーマとするとこれほど多くの人が集まるにもかかわらず、それを三重県は活かしきれていない」と指摘する。実際多くの人が三井家が京都発祥と認識していて、松坂にゆかりが深いことを知らないという。
田中さんは「江戸時代には多くの伊勢商人が江戸に出て商売をしていたが、そのなかで三井が現在も続いているのは、武士から見れば卑しいとされていた『商い』に誇りを持ち、道徳的に社会のためになる商売に精を出したからではないか」と話す。
松浦さんも田中さんの意見に賛同したうえで「そのときどきでベストを尽くす以外になかったのだろう。そして幸運にも生き残った人たちが歴史を語っている」と冷静に分析する。もともと神戸出身だという松浦さん。阪神淡路大震災では一時、家族さえ行方不明になるほど大きな被害を受けたという。トークでは、三重県でゼロからやりなおした当時の自らの思いを、三井高利が江戸に出た当初、不遇な時期を長く経験したことと重ねて体験談を語っていた。
観客から松坂木綿の伝統を守り復興させるヒントを尋ねられると、松浦さんは、松坂の歴史との接点として、ストーリーにして伝えることが効果的ではないかと、具体例を挙げながら提案。三井高利は伊勢商人だから成功できたわけではない。江戸で商売をした多くの伊勢商人のなかでも三井高利は特別だった。人を大切にして、育て、質素で勤勉、真面目に商売を行ったことが、350年つづく三井の礎を築いた、二人はこう結論づけていた。
満員の会場には三井高利の成功の秘訣を学ぼうとスーツ姿のビジネスマンが多く詰めかけていた。観客の一人で会計士の資格を持つ谷実紀さんは「田中先生の『会計の世界史』で会計の歴史を学んだ。経済の発展に伴い、会計がどのように発展してきたかを理詰めできちんと説明しており、田中先生の活動に注目するようになり今回のイベントを知って奈良から参加した」と笑顔を見せていた。