シーボルトの江戸参府200年を記念したプロジェクトの制作発表会が4月10日、日本橋の老舗扇子店「伊場仙」本社(中央区日本橋小舟町4)で開かれた。主催は老舗経営者や歴史研究家、アーティストなどさまざまなメンバーで構成する「シーボルト江戸参府200年記念事業実行委員会」。
同委員会によると、「江戸参府」は江戸時代に長崎・出島のオランダ商館長(カピタン)が、貿易の許可に対する礼と献上品納付のために、定期的に江戸へ赴き将軍に拝謁(はいえつ)した公式行事。鎖国下の日本で西洋人が唯一許された公認の旅で通算166回行われ、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトは1826年の162回目の参府に医官として随行している。この旅で一行は2月15日に長崎を出発。大坂、京都、東海道を経て4月10日に江戸に到着している。江戸滞在中は日本橋の薬種商「長崎屋」(旧日本橋本石町、現日本橋室町4)を宿舎とし、その間多くの蘭学(らんがく)者や医者の訪問を受けて交流している。長崎屋の軒下には物見高い江戸の町衆が見物に訪れ、その様子は葛飾北斎が「画本東都遊」に浮世絵として残している。
今回の発表会はシーボルト一行が日本橋に到着したとされる4月10日に合わせて開催されたもので、「シーボルト江戸参府200年記念事業」として今後予定しているラジオドラマや国際シンポジウム、三越劇場での記念舞台など関連企画の概要を紹介した。
ラジオドラマは「空飛ぶ研究室~江戸参府143日」のタイトルで、地元FM局「中央エフエム」(中央区京橋3)のラジオ特番「シーボルトがやってきたヤァ!ヤァ!ヤァ!」(毎週日曜11時~11時30分)の中で4月12日に放送が始まった。出演は女優の鳳恵弥さんやロックバンド「爆風スランプ」のパッパラー河合さん、「Dr.コトー診療所」作者の漫画家山田貴敏さんなどで、アニメ「名探偵コナン」出演中の声優松井菜桜子さんの指導で声優に挑戦する。
国際シンポジウムは「築地あじさい祭」として5月16日13時から聖路加国際大学「日野原ホール」で開催(入場無料、要資料代500円)。主催は「築地居留地研究会」(中央区入船2)で、第1部はオランダ王国大使館全権大使のロブ・アンダーソンさんが「日蘭友好史~シーボルト江戸参府200年記念に寄せて」と題して講演。さらに「シーボルト江戸参府200年」のテーマでパネルディスカッションを行い、第2部でも「歴史文化と観光、街づくり」をテーマにパネルディスカッションを予定している。
記念舞台は今回で7回目の公演となる「シーボルト父子伝~蒼(あお)い目のサムライ~」を、7月3日~5日に三越劇場(日本橋室町1)で上演。同演目の初演は2020年で、映画監督の木村ひさしさんが総合監修を務め、主演の鳳恵弥さんが演出・脚本、出演者のパッパラー河合さんが音楽制作も務め、加藤夏希さんらが出演する。
鳳さんは「今年は前回の物語を軸に研究者の話を聞いた上で、『大日本沿海輿地(よち)全図』などを国外に持ち出そうとしたことが発覚し、国外追放処分を受けた『シーボルト事件』で、スパイ説で汚名を着せられた高橋景保さんらの名誉回復も図る物語にしたい」と脚本の構想を明かす。鳳さんの動画では「鳳恵弥と市川美織の江戸長崎旅~シーボルト江戸参府200年記念番組~」も公開している。
日本シーボルト協会会長でシーボルト子孫の代表でもある関口忠相さんは「シーボルトは西洋医学の伝来に貢献しただけでなく、日本文化を欧州に紹介し、後のジャポニズムブームの形成にも影響を与えた人物。近年の研究ではシーボルト事件の再評価などを通じて、その活動や日本との関係性が再注目されている。シーボルトと日本橋の深い関係を、改めて知ってほしい」と話す。