兜町・茅場町(中央区日本橋)を紹介する無料の観光情報冊子「かぶとさんぽ」が3月17日に発行された。制作は、地域活性化を応援する学生団体「Are.Bra(エリブラ)まちぶら編集部」(台東区)。
「街歩きを通じて、その魅力を発掘・発信し、街のブランド化につなげたい」と、これまで横須賀追浜、西浅草、新子安など24地域を紹介する情報誌の発行を手掛けてきた同編集部。今回の中心メンバーは田中実乃梨さん(立教大3年)、森雄志さん(早稲田大4年)、比嘉のどかさん(上智大3年)、桑原詩歩さん(文教大3年)の4人。制作期間は8カ月で、就活や授業の合間を縫って足しげく兜町を訪れ、手分けして取材を重ね執筆した。
冊子はB5サイズ、20ページオールカラー。「日本のビジネス発祥の地 縁起もので運気UPのまち」をコンセプトに、証券街を日頃訪れることが少ない女性を主要ターゲットに設定。兜町になじみの薄い若者も楽しく読めるよう、紙面デザインや内容・構成にも工夫を凝らす。
冒頭は、「縁起美食」をテーマに老舗飲食店を紹介。「食べれば『うなぎ登り』に験を担げると、古くから証券マンに愛されてきた老舗」「主人が天気や株価に応じて、炊く米の量を変えている」など、証券街ゆかりの小ネタを随所にちりばめる。
東京証券取引所(兜町)の観光スポットとしての側面も紹介し、運気アップの仕掛けが施された建物のうんちくや東証の基礎知識も取り上げる。取材した飲食店は全20店舗。学生メンバーらが街の魅力を探し歩く中で見つけた路地裏の名店も、証券街にちなんだエピソードとともに数多く掲載している。
発行のきっかけは、同編集部が手掛けた情報誌を目にした同地区のデベロッパー・平和不動産からの「地域活性化を目的とした冊子を作りたい」というオファー。編集スタッフが、同じ日本橋でも三越前や人形町とは全く様相の異なる同地区に興味を持ち、調査を進めた。企画に当たり、同地域に銀行や証券取引所だけでなく小学校や公園、郵便など多くの「日本発祥」があることや、「縁起を担ぐ」という街の特性に面白さを感じたという。
取材は飛び込みで行われ、断られることもあったが「この街をもっと知りたい。学生目線で紹介することで盛り上げていきたい」という熱意に負けて取材に応じた店も少なくなかったという。「最初は街に対して冷たいイメージを持っていたが、取材を通じてお店の方の人情に触れるうちに、どんどん好きになってきた」と比嘉のどかさん。「証券マンがあふれかえっていた時代の息遣いやロマンが感じられるスポットも数多くあるので、当時に思いをはせるのも面白い。この冊子で街の歴史やストーリーを知ってもらうことが、街歩きのきっかけになれば」とも。
初回発行部数は2万部。東京証券会館1階に3月末オープンしたカフェに置くほか、掲載店舗で入手可能。今後は東京証券取引所や近隣の観光案内所での配布も予定している。