地元企業所有の空きビル(中央区日本橋堀留町2)を活用した特殊防災訓練が12月16日、日本橋堀留町で行われた。主催は東京消防庁日本橋消防署(中央区日本橋兜町14)と三井不動産(日本橋室町3)。
都市部での大震災を想定した同訓練。2021年3月に三井不動産と東京消防庁が締結した「消防隊及び自衛消防隊等の実践的訓練実施に関する協定」に基づくもので、2023年に初開催され今回は2回目となる。
消防署内やテナント企業が入居中のビルで行う避難訓練とは異なり、リハーサル無しで実際的な訓練をすることで実践力を向上させることが目的。当日は、東京消防庁の日本橋、麹町、高輪の各消防署に加え警視庁中央警察署や地元地域自衛消防隊、堀留一丁目町会など約80名、見学者約25名が参加。連携して訓練にあたることで相互理解を深め、地域の防災力や防災意識と対応力を高めることを期待するという。
訓練は解体予定の9階建てビルで行われた。前半は屋外駐車場やビルの室内で地元の防災組織が、本物の火を用いて粉末消化器や屋内消火栓を使った「初期消火訓練」を行った。煙が充満して視界がない室内を想定した「人命検索訓練」では消防署3署が連携。隊長から「全員着実に進行しろ」と救助開始の掛け声がかかると各員が「活動時間19分で設定した」「日本橋中隊侵入開始」などと密に声かけしながら火災現場へ進入した。
「連携訓練」では消防隊員から日本橋防火管理者連絡協議会と三井不動産グループ自衛消防隊に救出者対応が引き継がれ、意識のある2人を担架や非常搬送用車いすを使って救出する訓練を行った。「破壊訓練」では、鍵のかかった室内に侵入するためにエンジンカッターを使った扉を切断する訓練を行った。
後半ではビルの外に移動して、はしご車を使った6階からの「逃げ遅れ者の救出訓練」、「屋上からの救出訓練」などを行い、約2時間の訓練を終えた。
訓練後の講評で、東京消防庁日本橋消防署署長の石澤幸洋さんは「緊迫感の中で確実に訓練ができた。われわれの訓練施設ではできない本物のビルを使った訓練で現場力を高められた」と話す。「今年は能登をはじめ大きな災害の発生が続いた。地元の方々と連携した訓練は継続的に行うことが必要。今日の経験を持ち帰って周りの人にも話して意識を広めてほしい」とも。
三井不動産ビルディング本部運営企画一部企画グループ長の上田勝州さんは「大規模震災のときは公助を多く期待できない。『訓練でできないことは本番ではできない』を念頭に今回の訓練で見えた課題を日々の訓練に生かして安心安全のまちづくりの実現に貢献したい」と話す。
堀留町一丁目町会相談役の永田朗さんは「12月28日は18時から堀留町で夜回りを行う。地元にもしっかりと今日の訓練の話を伝えたい」と意気込む。