人形町松島神社(中央区日本橋人形町2)で11月7日、毎年恒例の「酉(とり)の市」が行なわれた。
酉の市は、例年11月の酉の日に商売繁盛を祈る各地の大鳥神社の祭礼。当日は、ワシが獲物をわしづかみすることになぞらえ、ワシの爪に似た熊手におかめや招福を飾った「かっこめ」が縁起物として売られる。同神社の熊手は他と比べて小ぶりで、女性でも持ち歩ける大きさ。「飾りかんざし」も同神社ならではの縁起物だという。
同神社は日本橋七福神の一つ。鎌倉時代、付近が埋め立て前の海だったころ、同所は松が多く茂る島だったことから松島と呼ばれていたことが名前の由来。島には毎晩火がともり、船人が航海の安全を祈念したといわれている。江戸時代には商売繁盛の神・大黒神を祭る神社として信仰を集め、吉原に近い歓楽街でもあったことから、人形細工職人、呉服商人、歌舞伎役者などが女性を連れて参拝することが多く、酉の市は当時から多くの人でにぎわったという。
現在、社殿はビルの1階に位置する。「関東大震災と太平洋戦争の戦火に見舞われたが、いずれも女性の手によって神様がかつぎ出され火の手を免れた。地元では、女性が支えている神社だといわれている」と神主の柴田弥栄子さん。「何度も危機に遭ってきた小さな神社だが、商店主の皆さま、そして女性に福を呼び寄せられるよう守っていきたい」とも。
酉の日は12日に一度あり、11月2回目の酉の日「二の酉」に当たる19日にも同市が行われる。