三井記念美術館(中央区日本橋室町2)で2月10日、毎春恒例の「三井家のおひなさま」展が始まった。
6回目となる今回のテーマは「母娘のおひなさまの競演」。十一家ある三井家のうち、北三井家十代・高棟夫人の苞子(もとこ)、十一代・高公夫人の鋹子(としこ)、高公の娘・浅野久子、苞子の三女で伊皿子(いさらこ)三井家九代・高長夫人の興子(おきこ)が愛したひな人形、ひな道具など23点を展示する。
旧富山藩主・前田家から嫁いだ苞子の旧蔵品は、実家から伝わったもの、結婚後に三井家で新たに作ったもの、江戸時代から三井家に伝来したものなど、さまざまな年代や種類のひな人形。1815年の作品「立雛」は文化年間の紙製で、愛らしい丸顔に松や藤、なでしこが描かれた小袖や金色のはかまを着た華やかな一組。同室には、娘・興子の段飾り用ひな人形を展示する。
鋹子が旧福井藩主・松平家から嫁入り道具として持参したのは、明治時代に日本橋に店を構えた名工・二代永德齋の作品が中心。丸顔に引き目かぎ鼻の顔立ちが特徴の「次郎左衛門雛」などを展示する。それと向き合うように、娘・久子の初節句にあつらえた京都の丸平大木人形店の五世大木平藏作のひな人形、ひな道具が並ぶ。幅3メートル、高さ5段の豪華なひな壇は近年まで浅野家で行われていた段飾りを再現したもので、当時の三井家の財力がうかがえる。
併せて、江戸最古の人形問屋「吉徳(よしとく)」が創業300年を迎えるのを記念し、特別展示「吉徳これくしょんの名品」を開催。日本における人形玩具研究の第一人者だった十代当主・山田徳兵衛が収集した古今東西の人形・玩具54点を展示する。
「毎年この時期のおひなさまの展示を楽しみにしている女性客が多い」と同館広報事務局の富樫純子さん。「江戸時代にひな祭りの習慣が広がって以降、日本橋室町付近には『十軒店(じっけんだな)』と呼ばれる人形市が立つ一角があった。この機会に人形の歴史にも興味を持ってもらえれば」とも。
入館料は、一般=1,000円、大学生・高校生=500円、中学生以下無料。開館時間は10時~17時。月曜休館(2月21日は開館、22日・27日は休館)。4月3日まで。