
三重テラス(中央区日本橋室町)2階のコミュニティースペースで3月20日、大学生らがプロデュースするイベント「Bridge MieーNihonbashi ~三重の工芸と日本橋の日常、江戸時代のつながりに新たな架け橋を~」が始まった。主催は三重テラスと日本橋学生工房。
毎年3月に東京各地で開催している「東京クリエイティブサロン(TCS)」の一環。「三重の伝統を日本橋でつなぐ」をコンセプトに、日本橋と三重県の伝統工芸品の展示に加え、老舗企業や三重の職人、クリエーターなど伝統工芸に関わるメンバーによる座談会やワークショップを展開する。
日本橋学生工房は、現役の学生や大学院生など12人で組織する団体。2002年の設立以来、日本橋を拠点に清掃活動や祭りへの参加、常盤小学校でのボランティア授業など学生らしい視点で活動を続け、街づくりに取り組んでいる。
同工房が展示会を開催するのは今回が初めて。三重テラスの首都圏営業拠点運営総括監の荒川健さんによると、以前から日本橋地域の店と連携した取組を行っている日本橋学生工房が新たな連携先や取組を探していたところ、同様に日本橋地域との連携について模索していた三重テラスと縁がつながり、今回のイベントが実現したという。
同工房の第23期代表を務める黒部真由さんは「今回の企画は、構想段階からゼロの状態で始めた手作りのプロジェクト。三重と日本橋の事業者にそれぞれご協力いただき、三重テラスとの事前打ち合わせも半年間に及んだ。三重県と日本橋の歴史的な結びつきを再発見し、若い世代の感覚を通して職人による伝統技術の価値を現代に合うように解釈し直して、次世代につなぐ場にしたい」と話す。
会場内の演出や展示スペースのデザイン設計、イベントの運営は全て学生の手によるもの。工房メンバーの吉田菜乃さんは「展示空間のテーマカラーの青は、日本橋と三重の共通点である空と豊かな水、藍染から着想を得ており、会場では濃紺の伊勢木綿や松阪木綿により表現している」と話す。
三重県からの出展企業は、伊勢神宮の賓客向けに御朱印帳や袋物などを製造する「伊勢とこわかや」(伊勢市)、普段使いがテーマの陶磁器メーカー「4th-market」(四日市市)、四日市ばんこ焼窯元の「藤総製陶所」(同)、三重県指定伝統工芸品「松阪木綿」を糸染めから織りまで一貫製造する「みいと織」(明和町)の4社。日本橋からは、江戸切子の店「華硝」、1689年創業の漆器店「黒江屋」、梨園染の「戸田屋商店」の3社が出店する。
20日に開催されたオープニングイベントでは、三重テラスでクリエーティブディレクターを務めるファッションジャーナリストの生駒芳子さんが登壇し伝統工芸の魅力と課題について講演した。生駒さんは「フランス、イタリア、日本が伝統工芸品のトップ3だが、中でも日本はものづくりの中にある祈りにも似た精神性が特徴。デザインと技術が両立しているが、ブランディング力と資本力、アイデア力が足りていない」と話す。「現在、伝統工芸とファッションを掛け合わせる仕事をしているが、日本の伝統工芸品の若い職人の才能を発掘して世界へ羽ばたかせたい」とも。
講演後の座談会では学生工房メンバーと活発な意見交換が行われた。黒部さんは「生駒さんとのトークを通して、日本橋地域の『敷居の高さ』も日本橋の大事な要素であることを再確認した。敷居を下げるのではなく、そこへ続く階段をつくり、すそ野を広げることが学生の使命なのかもしれないと強く実感した」と話していた。
会場では、3月29日に「黒江屋」による「伝統工芸の学習会」、同30日に「伊勢のご朱印帳の手作り体験」などのイベントやワークショップ(以上、有料)を開く予定。
営業時間は10時~20時。入場無料。3月30日まで。