
ギャラリー「YUKI-SIS(ユキシス)」(中央区日本橋茅場町1)で、アニメーション映像作家の榊原澄人と詩人の中尾太一による展覧会「子どもたちの霊歌-Spiritual Songs of the Children-」を開催している。
榊原さんは、北海道十勝出身。15歳で単身渡英し、英国王立芸術大学院大学でアニメーションを学んだ。2008(平成20)年からは、長野県の飯綱(いいづな)山麓に拠点を移し、制作を続けている。飯綱高原を舞台にした風景と記憶が重なり合う世界を描いたアニメーション作品「飯縄縁日ーIizuna Fairー」が長野県立美術館の常設展示に採用されるなど、国内外で高い評価を受けている。
中尾さんは2006(平成18)年、「思潮社50周年記念現代詩新人賞」を受賞。2024年には詩集「ルート29、解放」が映画化され、2025年には詩集「フロム・ティンバーランド」で「詩歌文学館賞」を受賞した。
2人は長年の友人で、共に長野県在住。同ギャラリーオーナーの寺島由起さんによれば「住んでいる環境も価値観も似ている。互いに尊敬し合い、心地良い距離感を保って制作ができている」という。
同展のメインは、榊原さんが現在制作している新作アニメーション「子どもたちの霊歌-Spiritual Songs of the Children-」の原画やドローイングと、中尾さんの新作詩。榊原さんが、同アニメーション作品の「鍵となる場面」から9つのシーンを切り取って絵画を描き、中尾さんが詩を寄せた。
中尾さんは詩を作るごとに絵画の並びを構成し直して、詩も絵画の世界に合わせて再構成した。中尾さんは「作品の『霊性』に触れ、内面から作品世界の秘密に寄り添うことに時間を割き、絵とテキストの間にある『抽象的な領域』を大切にした」と話す。
会場奥の展示室では、「飯縄縁日-Iizuna Fair-」のほか、女性の一生を1枚の絵画の中に描き、2006(平成18)年に「文化庁メディア芸術祭」で大賞を受賞した「浮楼(ふろう)」、生まれ育った北海道とアイヌ神話に基づく寓話(読みがな)的なイメージを織り込んだ絵巻のようなインスタレーション作品「? IN MOTION No.2」を展示する。
榊原さんは「展示タイトルには、『子どもたちが持つ純粋さや透明感、そして時折感じる不思議な力強さ』の意味をこめた。中尾さんの詩が加わることで、作品に新しい響きが生まれた」と話す。
寺嶋さんは「2人のコラボレーション展は2回目。詩と絵が調和し、双方の作品に魅力が増した。『子どもたちの霊歌』というテーマのもと、来場者には絵画、詩、映像が交錯する世界を漂うような体験をしてほしい」と話す。
開催時間は12時~19時。日曜・月曜休廊。入場無料。6月21日まで。