展示企画「三勝謹製 アートゆかた展」が3月4日、人形町の老舗ゆかた店「三勝」本社の「百年ギャラリー」(中央区日本橋人形町3)で始まった。
「ゆかた屋三勝における『歌川国芳両面相の解釈』 木版画浮世絵から注染へ」と銘打ち、創業130年以上の歴史を持つ同社が手がける新たな試み「アートファブリックゆかた」を紹介する同展。江戸後期の浮世絵師・歌川国芳の作品「両面相」を題材に、江戸以来の染色技法「注染(ちゅうせん)」と刺しゅうを組み合わせて製作した新作ゆかたや西陣織によるジャケットなどを中心に展示する。
歌川国芳は江戸時代後期に活躍した浮世絵師で、奇想天外な構図やユーモアあふれる作風で知られる。今回モチーフに選ばれた「両面相」は、上下を逆さにすると別の顔が現れる「上下絵」と呼ばれる遊び絵の一種で、江戸の庶民文化の中で親しまれた作品という。
同社四代目の天野半七さんは、この浮世絵をゆかた生地として再解釈。木綿の白生地に注染で図柄を染め上げ、さらに刺しゅうを加えることで立体的な表情を生み出した。注染は生地を重ねて染料を注ぎ込む伝統技法で、色が裏まで染まるのが特徴。反転した構図を生む両面相の図柄と技法の相性の良さが、今回の作品の発想につながったという。
完成した反物には26カ所に刺しゅうを施し、浮世絵の線や表情を布の上で再構成する。伝統工芸としての染色技術と現代の感覚を融合させた「着るアート」としてのゆかたを提案する。
会場では、ゆかた生地の製作工程や試作資料のほか、同社が保有する「伊勢型紙」の意匠のひとつ「鯛中鯛(たいちゅうたい)」を活用したランプシェードのプロトタイプも展示する。照明をともすと文様が柔らかく浮かび上がる仕組みで、伝統文様を暮らしの中で楽しむ新しい提案として来場者の関心を集めていた。
アートファブリック「帯地のジャケット」は西陣織の帯地を使う。折柄(おりがら)だけで「両面相」を表現したシンプルな仕上がりとなっている。
三勝は1894(明治27)年創業のゆかた製造卸で、日本橋人形町に拠点を置き、江戸の染色文化を今に伝える企業として知られる。浮世絵を題材にした染め柄の制作にも長年取り組んできた。同社の近くにはかつて歌川国芳が住んでいたと伝えられており、こうした歴史的な縁も今回の企画の背景にあるという。
天野さんは「浮世絵という江戸文化の象徴を、染色という日本の伝統技術で現代の表現として再構築した。弊社で保有している約2万枚の型紙の意匠を基に、さまざまな手仕事と協創して日本の美意識を暮らしの中に届けたい」と話す。
期間中、土曜日には14時から展示案内ツアーを開催。3月28日には菓子司「とらや」とのコラボレーションによる両面相の上下絵「だるま」と「おかめ」の菓子を用意した「お茶会」も開く。開催時間は14時~15時30分。参加費5,000円.定員は8人。予約はインスタグラム「お江戸日本橋 ゆかた屋 三勝」のダイレクトメッセージで受け付ける。
展示は3月10日までの前半と16日~27日までの後半の二期に分けて開催する。開催時間は14時~17時(16時最終入館)。水曜日曜祝日休館。入場無料。