東京駅丸の内駅舎南口のJPタワー(千代田区丸の内2)で6月21日、「Deep Learning Lab(ディープラーニング・ラボ)」設立1周年を記念したイベント「DLLAB DAY2018 深層学習を使いこなす日」が開催され、関連企業の担当者をはじめ、研究者や学生ら全国から約500人が集まった。主催は日本マイクロソフト(港区)とプリファード・ネットワークス(千代田区)。
18日の大阪地震で自宅が被災し、スカイプで参加となった金出武雄教授
ディープラーニング・ラボは日本最大の深層学習コミュニティーで、人工知能の深層学習に関する開発事例や最新技術動向に関する知見の共有や情報発信を目的として昨年6月に設立された。ウィンドウズやマイクロソフト・オフィスなどPC基幹ソフトで知られる日本マイクロソフトと最先端の深層学習技術を活用する製品開発ベンチャー、プリファード・ネットワークスらが中心となり、テクノロジー、人材育成、マーケティングをテーマに全国各地で20以上のイベントや勉強会を開催してきた。
オープニングではカーネギーメロン大学の金出武雄教授が基調講演を行う予定だったが、18日の大阪地震で自宅が被災し、スカイプで参加。「AIはあくまで道具。その道具を使うことが目的となってしまい、現実を道具の範囲の中に押し込めてしまってきた」と警鐘を鳴らしつつ、「人間の能力を拡張していくことがAIの目的。人をより賢く、生産的にするためにAIは何をするべきか考えた時、教育の中でこそ生かせるのではないか」と人工知能の若い担い手たちに熱いメッセージを送った。
4階のホールでは、P&Gジャパンの今村修一郎さんらによる深層学習を活用したオフラインマーケティング事例やマネックス証券で谷村寛明さんらが取り組んでいるAI導入事例、東京慈恵会医科大学の中田典生さんらによる医療現場における現状や今後の展開などケーススタディやトークセッションで構成されるカンファレンスが行われた。5階会場では、与えられた時間内にポテトチップスのパッケージ認識ソフトのプログラミング製作を競う学生ハッカソンや、理工系の学生がIT企業を選別する「逆面接」が行われた。
同ラボの発起人の一人で、ギリア代表の清水亮さんは「日本人は情報公開に対して過敏で、特にビジネスに活用することにネガティブな反応をしがち。AIの開発には質の高いデータが最も重要で、適切に管理運用しデータをシェアできれば、社会的なメリットも大きい。今後、ラボを通じてAIやデータの正しい理解や付き合い方も含めて広く普及啓発していきたい」と締めくくった。