日本橋本町の宝田恵比寿神社周辺で10月19日・20日、昨年に引き続き開催中止となった、江戸中期から続く秋の風物詩「べったら市」に思いを寄せるイベントが開催された。
日本橋大伝馬町で「べったら市」オマージュ企画 来年再開に願い込めて
同神社は1606年、江戸城拡張の折に城外から集団移転した宝田村の鎮守として同地に遷座。以来、商売繁盛、家内安全、防火の守護神として地元民はもとより関東一円で広く崇敬を集めている。
同神社が鎮座する大伝馬町周辺は江戸城常磐御門から日光・奥州に続く街道として大店(おおだな)が並び、江戸時代前中期は江戸一番のにぎわいを見せていた目抜き通り。10月20日に行われる「恵比寿講」は、1年の最大の稼ぎ時である歳末を迎えるに当たり地元商人が商売繁盛を願う重要な行事で、講の前日、参道に市が立ち、魚や野菜、神棚などが売られていた。中でも、こうじをべったりと付けた浅漬け大根は甘いものが貴重な時代に人気を呼び、よく売れたことから「べったら市」と呼ばれるようになったという。
今年も新型コロナウイルス感染拡大を受けて開催見送りとなったが、毎年同イベントを心待ちにしていた町内住民や団体では、それぞれ3密を避けながら趣向を凝らした独自の企画を開催した。
宝田恵比須神社近くのモロッコカフェ「ダリア食堂」(中央区日本橋大伝馬町)ではイベント「ダリア酒場@べったら市2021」を開催。「日本酒利き歩き」を主宰する佐々木酒店(日本橋人形町2)が提供する各地の地酒販売のほか、築地の漬物店「吉岡屋」の希少品「皮付きべったら漬け」や「ゆず風味べったら漬け」を販売。地元客らが立ち寄り、久しぶりのべったら漬けに手を伸ばし、まとめ買いをしていた。
佐々木酒店の佐々木邦秀さんは「べったら漬けがどれだけ売れるか未知数だったが長くステイホームが続いていた反動か予想以上の人出があり、お客さまの反応も上々。23日にも甘酒横丁の佐々木酒店横のスペースで、べったら漬けと共に日本酒をお楽しみ頂くイベントを開催する予定」と話す。
大伝馬町のシェアキッチン「社員食堂ラボ」(大伝馬町)では、日頃フードイベント「mikibar」を主宰する林美貴さんが昨年に引き続き「令和3年べったら市番外編」を開催。べったら漬けをアレンジしたおつまみやドリンクを提供し、「麗人社ギャラリー」(同)オーナーの野口和男さんが率いるブルースバンド「ザ・縄文ズ」が、地元にちなんだ楽曲「Oh!伝馬町」や「べったら市」のオマージュ曲「Be-ta-ra」などを披露した。
「本来なら宝田恵比寿神社を中心に屋台が立ち並び、2日間で10万人を超す人出でにぎわう大伝馬町かいわいだが、昨年に引き続き中止になったのはとても残念」と主宰の林美貴さん。「新型コロナウイルスの感染状況次第だが、来年はぜひ開催してほしい。4月の『日本酒利き歩き』、5月の『くされ市』、10月の『べったら市』と、大伝馬町周辺は楽しい地元イベントの多い街。早く本来の街の姿に戻ってほしい」と話していた。