伯爵藤堂高嗣(とうどうたかつぐ)旧蔵の黄金の茶道具一式5月27日、丸の内ビルディング(千代田区丸の内2)7階の丸ビルホールで開かれた特別オークションで、3億円で落札された。
競売商「シンワアートオークション」(東京都中央区)が主催した同オークション。国内外の近代美術・コンテンポラリーアート、ジュエリー等が出品され、会場のほか、電話、書面、インターネットを通じておよそ300人が参加し、オークションの様子はユーチューブで中継された。
最後に出品された伯爵藤堂高紹(とうどうたかつぐ)旧蔵の「金茶道具一式」には、事前から注目が集まっていたという。豊臣秀吉ゆかりとされる黄金の茶道具一式で、藤堂家に代々引き継がれた家宝。豊富秀吉が褒美(ほうび)の一つとして藤堂高虎(どうどうたかとら)の敢闘をたたえ、自らが黄金の茶室で愛用した金の茶道具を授けたとする説もあるという。
藤堂家は金の茶道具を秘宝とし、一般公開されたことはほぼなく、1929(昭和4)年3月、東京・上野の東京府美術館で開催された「日本名宝展展覧会」での披露されたことが唯一の記録として残っている。第二次世界大戦中には金属類回収令を受けて供出され、日本銀行が買い取ったが、武器製造の資源として使われることなく残されたため、1960(昭和35)年、藤堂家が買い戻した。
同大戦中、日本銀行が行った金の品位測定によると、茶道具は、金80~88パーセント、銀12~20パーセントの合金製。高さ22.2センチで奥行20.8センチの茶釜のほか、茶わん、天目台、茶入、風炉、釜かん、しゃく立て、火箸、建水、ふた置きの合わせて10点すべてが黄金色に輝く一式。製作時期や作者は不明だが、随所に高度な技術がうかがわれ、各々の表面には精緻な細工が施され、美術品としての価値も高いという。一方で、由来については情報が不足している面も多く、同社では事前に「真贋(しんがん)の保証はしない」と告知していた。
茶道具一式は、3億円で廣澤美術館(茨城県筑西市)が落札。電話でオークションに参加した美術担当者は「今後は企画展などを通じて紹介する予定。素晴らしい物なので皆さんに見てもらい、筑西の街のにぎわいにつなげたい」と喜んでいた。
同社会長の倉田陽一郎さんは「海外からも入札があり、2億円からは一騎打ちとなり盛り上がった。日本の美術館が落札したのもよかった」と話す。