ぺんてる本社(中央区日本橋小網町7)で5月25日、「柴崎先生のアートクレヨン教室」が開催された。
美術系ユーチューブチャンネル「Watercolor by Shibasaki(柴崎春通の水彩チャンネル)」配信者の柴崎春通さんとぺんてるが共同開発した「アートクレヨン」を体験してもらおうと企画した同教室。この日は、「おじいちゃん先生」として知られる柴崎さんを講師に招いた。参加者は、今年で76歳を迎える柴崎さんの指導を直接受けながら2時間かけて作品を仕上げた。
同社と柴崎さんの出合いは2021年。柴崎さんが同社の「ずこうクレヨン」を使ったクレヨン画の動画配信が話題になったことから。同社執行役員サスティナビリティ推進部長の田島宏さんが柴崎さんのアトリエを訪ね、話す中で柴崎さんから「大人向けのクレヨンをつくってほしい」と提案があったという。
その後、柴崎さんは茨城工場を見学し、若手製造者など同社の社員たちと交流を深め、1年がかりで「大人向けクレヨン」の開発を進めた。柴崎さんの水彩画家としての経験と、子どもに向けて77年間教育用画材を作ってきたクレヨン製造の技術が融合して2023年秋、「アートクレヨン」が完成した。
「アートクレヨン」は8色入りの油性クレヨンで、色同士を混ぜ合わせる「混色」と、下地の色の上に色を重ねる「重色」の2技法を両立できるのが特長。従来のクレヨンのような手軽さで、油絵のように重厚な絵を描くことができるという。
クラウドファンディング「アートクレヨン・プロジェクト」の返礼品企画として2023年に初開催した同教室は、今回で8度目。毎回約30人の定員がすぐに埋まる人気ぶりで今回は31人が参加した。
今回の題材は、あじさいが咲き誇る雨の風景。参加者は柴崎さんがラフに引いたガイド線を下絵にして「クレヨンは寝かせて使う」「遠近感をだすため手前は暗く、奥は薄暗くあまり描きこまない」などの指導を受けながら絵を描いた。後半には「曇天」「雨降り」などの条件が加わり、難度が上がったが、集中して絵を仕上げていた。
参加者たちは「絵を描く時間が楽しくなる。柴崎先生の指導は的確で、時に厳しく教えてくれるのも良い」「今まで使ったオイルパステルでは黄色がいまいち使いにくかったが、これは黄色の伸びが格段に使いやすい」などと話していた。
柴崎さんは「教室全体の雰囲気づくりは大切にしている。絵を描くのは個人の作業なので放っておくと入り込んでしまう。それをかき回して、楽しさが教室に満ちるようにしている。ユーチューブでうれしいコメントをもらうことも多いが、現場に来て一緒に絵を描き、時間を共有するのは代えがたい喜び」と笑顔を見せる。
参加者の石賀爽天さんは「これまで使っていたクレヨンは塗り重ねると濃くなるが、このクレヨンは薄く描いてもよく伸びた。白色がきれいに載るのもうれしい」と話す。