「第7回 蔦重(つたじゅう)勉強会」が12月1日、常盤小学校別館体育館(中央区日本橋本石町4)で開かれた。
大河ドラマ「べらぼう」主人公で江戸時代の版元・蔦屋重三郎を切り口に日本橋の歴史と文化を学ぶ7回シリーズ講座の最終回。会場には近隣の住民や歴史ファン約200人が訪れ、1年半にわたる連続講座を締めくくった。
主催は、地元町会有志でつくる「蔦屋重三郎を学ぶ日本橋の会」。2024年7月4日の第1回では、中央区教育委員会の増山一成さんが講師を務め、「蔦屋重三郎を知る~生い立ち、商業的活動、中央区との関係について」をテーマに、通油町(現・日本橋大伝馬町)で地本問屋「耕書堂」を構えた背景や、歌麿・北斎・写楽らを世に送り出した出版活動について解説した。
第2回では「蔦重の出版活動と取り巻く文化人」をテーマに、黄表紙や錦絵のヒット作づくりと文化人ネットワークを紹介。第3回は浮世絵伝道師の牧野健太郎さんを迎え、「浮世絵語り」と題して日本橋や魚市場の浮世絵を通じて江戸の暮らしをひもとくとともに、子ども向けの浮世絵刷り体験や江戸玩具体験も行い、親子連れなどでにぎわった。
その後、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の舞台裏や、蔦屋重三郎ゆかりの地を取り上げる回を重ねながら、2025年9月の第6回では歴史ライターの川合章子さんを講師に招き、うなぎ、そば、すし、天ぷらといった「江戸の四大名物食」と日本橋の老舗文化の関わりを紹介した。
最終回の講師は、蔦屋重三郎研究の第一人者で大河ドラマの考証を務めた中央大学文学部教授の鈴木俊幸さん。「蔦重のまなざし」と題した講演では、天明期の江戸を舞台に、蔦重がどのような視点で作家や絵師を見いだし、どのような行動力で新しい出版物を世に送り出していったのかを、史料やゆかりの地のエピソードを交えて語った。
鈴木さんは蔦重の商売について、「もうけだけを追った本屋ではなく、時代の感性を読み取り、文化そのものを編集しようとした存在だった」と評価。「才能ある絵師や戯作(読みがな)者を見抜く目と、リスクを恐れず新しい表現に賭ける胆力があったからこそ、江戸の町人文化が花開いた」とも。大河ドラマのシーンに通じる具体例を挙げながら解説すると、来場者は熱心に耳を傾けていた。
会場では、第1回から通して参加した人の姿も多く見られ、「蔦重と江戸の文化を体系的に学べる場がありがたかった」との声が聞かれた。講座で扱われたテーマが、今の日本橋が進める再開発やまちづくりとも重なり、「歴史が現在へつながっていることを実感した」との感想も寄せられた。
蔦重勉強会事務局長で大伝馬町二之部町会町会長の瀧健太郎さんは「多くの町会の皆さまのご協力で、なんとか最終回までこぎ着けることができた。『べらぼう』の放送はまもなく終わるが、まだはっきり決まっていないが来年以降もテーマを『歌舞伎』などに広げ、日本橋の文化に根差した勉強会を続けていきたい」と話していた。