複合型書店「誠品生活日本橋」(中央区日本橋室町3)のイベントスペースで11月20日、特別セミナー「園芸療法を応用した従業員のストレスケアについて」が開かれた。主催はカゴメ(日本橋浜町3)とパソナ日本総務部(大阪市)。
パソナ日本総務部が11月19日から21日にかけて開催した健康経営をテーマにしたイベント「オフィスに『癒しとひらめきの森』を」の一環。企業の健康経営に園芸を取り入れる取り組みは近年、新手法として注目される中、会場には人事・総務担当者を中心に多くの参加者が集まっていた。
冒頭、カゴメ健康事業部の信田幸大さんが、今年から同社が開始した健康経営サービス「アグリセラピー(トマト栽培プログラム)」の取り組みを紹介。オフィスや屋外スペースで従業員が苗植えから収穫までの工程を体験し、その過程でストレスの緩和、気分のリフレッシュ、部署間交流の活性化など、心理面・社会面の効果が得られた事例を説明した。
信田さんは「食と農業に携わる企業として、植物を育てる体験を通じて働く人の心と体を整える支援をしたい。まだ始めたばかりの事業だが、これからのアグリセラピーを『働く場に自然を取り戻す新しい選択肢』にできれば」と話していた。
続いて登壇した千葉大学大学院園芸学研究院教授の岩崎寛さんは、「園芸療法を応用した従業員のストレスケア」と題して講演。千葉大学で行われてきた研究から、公園や緑地を歩くことでストレス値が低下すること、観葉植物に短時間触れるだけでも心理指標が改善することなど、多数の実証データを紹介した。また、高齢者施設での植栽活動がうつ傾向の改善に寄与した研究などを例示し、「植物の存在は人の心身に幅広い良い影響をもたらす」と説明した。
岩崎さんが提唱する「使う庭」構想では、単なる鑑賞用ではなく、育て、手入れし、収穫するという「参加型の緑」が重要だと強調。「植物と関わることは、達成感と自己効力感を高め、組織におけるコミュニケーションの改善にもつながる」と岩崎さん。「職場環境に取り入れる際には、業務の合間に触れられる小規模な栽培スペースでも効果がある」とも。
セミナーの終盤には、参加者との質疑応答も行われ、「導入コストや管理の実際」「都市部オフィスでの実現可能性」など具体的な質問が相次いだ。会場からは「植物の働きかけを科学的に理解できた」「社内研修として取り入れたい」といった声が多く寄せられていた。