取り壊し間近の「喫茶木屋」で電子音楽ライブ-老舗54年の歴史で初

閉店した「喫茶木屋」で行われたハウ・トゥ・フラワーのライブの様子

閉店した「喫茶木屋」で行われたハウ・トゥ・フラワーのライブの様子

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 日本橋の老舗刃物店「木屋」本店地下にあり、昨年末に閉店した「喫茶木屋」(中央区日本橋室町1、TEL 03-3241-7330)で7月25日、電子音楽と生楽器を組み合わせた音楽ユニット「How to Flower(ハウ・トゥ・フラワー)」のミニライブが開かれた。

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 1955(昭和30)年に開店した同店。東京メトロ三越前駅A4 出口の階段踊り場にひっそりと入り口があり、温かみのあるクラシックな内装が特徴の老舗店だったが、再開発のためビルが取り壊されることになり、54年の歴史に幕を閉じた。現在はビンテージポスターを中心に展示するギャラリー「K-bldg. Vintage Basement(ケービルディング・ビンテージ・ベースメント)」として運営しているが、9月15日にはその閉鎖も決まっている。

 ハウ・トゥ・フラワーはギタリストのmAkiこと牧添哲英(あきひで)さん、ピアニストのTOMOYOこと青木智世さんの2人で成る2007年結成のユニット。パソコンで作成した電子音楽と生楽器を併せて演奏する、幻想的で優雅なサウンドが持ち味。昨年6月にはロンドンで公演を行い、現地で販売したファーストアルバム「歌詠み『立花』」が即日完売するなど、世界に目を向けた活動をしている。

 「日本橋発 風光明美なオト世界」が同ユニットのコンセプト。神奈川県出身の青木さんは「渋谷や新宿といったほかの東京の街とは違う温かみや落ち着きがある」と感じた日本橋にほれ込み、移り住んだ。「昔から文化の発祥の地であった日本橋から世界へ向けて音楽を発信したい」という思いで、作詞・作曲、演奏、プログラミングからレコーディングまでのすべてを日本橋で行う「音楽の地産地消」をテーマに掲げる。

 同ユニットが喫茶木屋と出会ったのは、同店が閉店する1週間前。以前から存在は知っていたものの、店内に入ったことはなかったという2人が、偶然、店頭に張られた閉店の告知とビンテージのマッキントッシュPC展示の告知を目にしたことをきっかけに入店。曲作りにマッキントッシュを使っていることから興味を引かれたという。

 牧添さんがそのときの出来事と閉店を惜しむ気持ちをブログに投稿したところ、同店店長の荒川良則さんが偶然その記事を読み、「そこまで応援してくれるなら」と喫茶閉店後の今年2月から取り壊しまでの数カ月間、ギャラリーとして開放することを決めた。以降、ハウ・トゥ・フラワーと荒川さんの交流が始まり、今回、「もうすぐ取り壊される、この素晴らしい場所を記録に残したい」という2人の申し出から、同店開店以来の音楽ライブが実現することになった。同時に、「音楽の地産地消」を掲げながらライブ活動は四谷や渋谷が中心で、「適した場所がない」日本橋ではライブを行ったことがなかった同ユニットにとっても、初めてそのテーマが完成する機会になった。

 ライブでは新曲6作品を演奏。当日の様子はビデオ撮影も行い、年末に予定する新アルバムの発表に合わせてインターネット配信を行うという。

 ざまざまな縁が重なって実現した同ライブ。青木さんは「こうなったらいいねと話していたことが現実になった。夢のよう」と話す。

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