和洋紙卸を手がける小津産業(中央区日本橋本町3)が現在、「日本橋やさい」事業に取り組んでいる。
1653年、紙問屋「小津清左衛門店」として創業した同社。手すき和紙や書道用紙など高級和紙のほか、ティッシュペーパーなどの家庭紙、農業・医療分野で使用される不織布などを製造販売している。3年前、食品への毒物混入や産地偽装などで食の安全が話題となる中、東京産の安心安全な野菜を提供しようと、府中市内の家庭紙用倉庫内に栽培スペースを設け同事業を始めた。
約150坪のスペースに設置した白い棚に、成長段階の異なる野菜やハーブを植え付けた発砲スチロールケースが並ぶ。室内はほぼ無菌の状態で常に22度前後に保たれ、1日1,700株ほどの野菜が収穫できる。
「日本橋やさい」は、ほぼ菌がいない状態で水分を極限まで抑えて栽培するため、通常の葉物野菜よりもみずみずしく、日持ちしやすいのが特長。天候や環境によるストレスが少ないため、色むらがなく、えぐみや苦みもないという。通常栽培の野菜に比べ、カルシウムやベータカロチン、ビタミンCなども豊富で栄養価が高い。天候に左右されず約40日で収穫できるため、価格も収穫量も安定し、レストランなどの業務用にも適している。
「電気を使用するので、まだ完全には環境に良いとは言えない」と同社担当の金子裕一さんは課題を挙げる。今後は風力や太陽光などの環境に優しい電力を使って栽培するのが目標だという。「野菜嫌いのお子さんも食べられると好評。とにかく一度食べてみていただければ」とも。
現在栽培しているのはレタス、ロメインレタス、グリーンリーフ、バジル、クレソン、からし水菜の6種。日本橋三越(日本橋室町1)本館地下1階の「サン・グリーンズ」で、「小津やさい」の名で販売している。価格は、レタス・ロメインレタス・グリーンリーフ=各250円、バジル・クレソン・からし水菜=各200円。三越本店への入荷は水曜・金曜。
イタリアンレストラン「サルバトーレ・クオーモ」の都内各店でも料理に使用されている。