国際交流事業「東南アジア青年の船」に参加した各国代表の若者たちが10月30日、日本橋の街歩きを楽しんだ。主催は内閣府。
東日本大震災の被災地「南三陸町」の被災状況と復興の実態を学習
参加青年の相互理解と友好促進、日本の青年の国際的視野の拡大を目的として1974(昭和49)年から続く同事業。カンボジア、ラオス、フィリピン、タイなどASEAN加盟10カ国を代表する学生や社会人約280人と日本参加青年39人が乗船し、約50日間の共同生活を共にしながら諸国を訪問する。
一行は各国訪問の旅の出航前プログラムとして、複数の課題別チームに分かれ、日本橋には「防災と復興」チームとして日本人も含め39人が参加した。内閣府からの要請を受けた三井不動産が2017年より同事業の視察受入れに協力しており、日本橋訪問は一昨年に続き3回目。今年は同社の「防災と復興」に関する取り組みのなかから「わたす日本橋」と「日本橋エネルギーセンター」を紹介した。
参加者たちは、日本橋室町三井タワー(日本橋室町本町1)5階のカンファレンススペース「mot.カンファレンス」で、同社が直営する東北の情報発信と交流拠点「わたす日本橋」の取り組みと、同拠点と深い関りのある東日本大震災の被災地「南三陸町」の復興の実態を学習。講座後「わたす日本橋」で南三陸や東北の食材を使った昼食を堪能した。
昼食を挟んで「日本橋経済新聞」編集長の仁藤正平さんの案内で日本橋を街歩きし、「明暦の大火」や飢饉(ききん)など度重なる災害や、戦災をくぐり抜けてきた日本橋の「防災と再生への取り組み」の歴史を紹介。江戸桜通り地下の災害時避難スペースや「日本橋」の東京大空襲時の焼夷弾の弾痕、震災や戦災を乗り越えてきた「三井本館」、「日本銀行」などを見学した。
「江戸時代、50回以上と言われる大火や災害を経験してきた日本橋の商人は災害の翌日から商売が再開できるよう、常に再建用の木材を木場に備蓄するなどして準備を怠らなかった。さらに『打ちこわし』など庶民からの略奪を受けて学習した大店の旦那衆が協力して町会所を立ち上げ、大量の『お救い米』を米蔵に蓄えて被災者に振舞うセイフティーネットの仕組みも構築していた」と仁藤編集長。「日本橋には民間の知恵で、災害を乗り越えてきた経験がある。持続可能な社会を創り出す商人の行動倫理、最近話題の『SDGs』にも通じる社会性がすでに江戸時代の旦那衆の中に芽生えていたともいえる。せっかく日本橋に来ていただいたのだから、こうした先人の知恵に学んでほしい」と話していた。
街歩き後、参加者は三井不動産が東京ガスとともに進める分散型電源供給施設「日本橋エネルギーセンター」を見学。続いて「mot.カンファレンス」で、一般社団法人「ボランティアサポート」代表理事の村上泰吏さん、NPO法人「底上げ」副理事長の斉藤祐輔さん、大学生の曽根原和花さん、復興庁や経産省で復興事業担当経験ある三井不動産社員らによる「復興とは」をテーマとしたパネルディスカッションに聞き入っていた。
日本の旅を終えた一行は11月3日に出航し、ベトナム、シンガポール、ミャンマー、マレーシアの順で各国を訪問する。