国際写真祭「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」の中心となる屋外回遊型展示企画「New Japanese Photography in New Light」が10月5日、八重洲・日本橋・京橋の各エリアで始まった。主催は一般社団法人「TOKYO INSTITUTE of PHOTOGRAPHY」。
今回の展示は、同写真祭創設者で写真関連企業「シー・エム・エス」の速水惟広さんが発案し、写真と都市との親和性の高さから地域振興に有益と考えた東京建物が速水さんと共に他のデベロッパーによる建物の敷地や建設現場も含め、展示場所の管理者を一軒一軒回って協力を仰いだという。
東京建物は、1896(明治29)年の創業以来、八重洲地区(Y)を中心に日本橋(N)、京橋(K)(YNKエリア)で開発事業を展開しており現在、同社を含め大手デベロッパー数社が同地域で競うように大型開発事業を進めている。「東京建物」専務の小澤克人さんによると、東京駅の鉄道利用者も含めると同エリアの平日の利用者数は50万人を超えるが、週末の来訪者数は約12万人と渋谷や品川など他の再開発地域には及ばないという。
「写真という魅力的なコンテンツをYNKエリアに配置することで、東京駅の乗降客に八重洲から日本橋、京橋へ回遊して頂くことが可能となる」と小澤さん。「東京を国際的な写真都市に育てる夢に加え、インバウンド客も含めたYNKへの来訪者数大幅増による地域への経済効果も期待でき、仮に期間中目標の55万人の来訪があり、その半数が外部からの来訪客だった場合、全体の経済効果は作品の販売も含めて約143億円という試算もある」と期待を寄せる。
「写真は文化的資産」と話す速水さんによると、日本の写真は1974(昭和49)年、森山大道、奈良原一高、東松照明、土門拳など日本人写真家15人が選ばれてニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催した「New Japanese Photography」以来、「JAPANESE PHOTO」として世界で注目を浴びているという。「米サンフランシスコ近代美術館や英テート美術館など先進的な取り組みで知られる美術館では現在、多くの日本人写真家の作品を展示しているほか、米ボストン美術館なども収集作品数を増やしている」とも。
速水さんは「権威あるハッセルブラッド国際写真賞の受賞者数も、日本人は米国人に次ぎ二番目に多いことも国内では知られていない。この写真祭を、東京という都市を舞台に、アーティストに国際的な作品発表と制作の場を提供する機会とすることを目指している」と話す。
今回の写真祭では50年前の出展作家全員が参加を快諾。さらに当時、顧みられることの少なかった女性写真家の作品、現在活躍する若手作家、写真を学ぶ学生などさまざまな人の作品を期間中、エリア各所に展示する。
将来的には美術作品として市場を形成することも視野に入れているという速水さん。「東京を『写真を見るための世界的拠点』にしたい。東京建物がYNKと呼ぶ一帯は日本随一のビジネス拠点であると同時に、百年以上続く老舗も多く存在する歴史・文化的地域。老舗店の店先、路地、建設現場の囲いなどを『シティキャンバス』に見立てるなど展示場所が点在する」と話す。「回遊するだけでも楽しいが、個性的な写真作品を同時に楽しめる。より多くの人に写真の魅力に触れていただき、写真のすそ野を広げることが、優れた写真家の輩出にもつながる」とも。
開催時間は会場により異なる。入場無料(一部の展示は有料)。10月27日まで。