
大手町・丸の内。有楽町エリアの企業が手がける都市養蜂活動「丸の内ハニープロジェクト2025」による就業前の採蜜が5月15日、大手町ビル屋上「SKYLAB」(千代田区大手町1)で行われた。
「大丸有環境共生型まちづくり推進協会(エコッツェリア協会)」(同)が運営する同活動。大丸有とは大手町・丸の内・有楽町エリアを指す。
2015(平成27)年から「銀座ミツバチプロジェクト」(中央区銀座)と「日本工業倶楽部」(千代田区)の共同プロジェクトとして、セイヨウミツバチの都市養蜂を開始した。今年で10年を迎える。2016(平成28)年には大丸有の企業を中心に「丸の内ハニープロジェクト実行委員会」を組成した。
採蜜期間は、ミツバチが活発に活動する3月から9月まで。参加メンバーは隔週木曜、就業前の8時に同ビル屋上に集合する。技術指導を担う「銀座ミツバチプロジェクト」の田中淳夫さんは「花が多く咲く春から初夏にかけてはトップシーズンで、ミツバチにとっては育児シーズン。夏になると養蜂箱は1段に減る。秋になるとまた花が咲き始めるが、その時期は冬に向かう準備のため採蜜は休む」と話す。
ここ数年は年間約200人が参加。メンバーは個人の他、近隣の企業やホテルの従業員など。事務局を務める三菱地所の松井宏宇さんによると、ここ数年はサスティナビリティへの関心も高まって参加希望が増えているため、人数を制限するほどだという。「10年間の活動を通して、企業を超えた人的交流が生まれ、大小のコミュニティーが築かれた。新たなコラボレーションやコミュニティー創出の場にもなっている」と話す。
採蜜作業は、養蜂箱から巣枠を取り出し、遠心分離機にかけて蜂蜜を取り出すまで。糖度計で測定し、糖度が79度以上の巣枠のみを取り出し、採蜜するために「蜜ぶた」を切り落とし分離機に運ぶ。採蜜完了後に分離機内に残った蜂蜜をすくってパンに付けて食べるのも楽しみの一つ。
同エリアでのミツバチの行動範囲、半径2キロメートル圏内には皇居や日比谷公園など豊富な蜜源があり、上質な蜂蜜が採れるという。エリア内の飲食店・ホテルなどで販売している。
松井さんは「蜂蜜を味わうだけではなく、2024年からは蜂蜜に含まれる花粉のDNAの分析も始めた。蜜源になる植物は季節によって異なり『4月はサクラ、7月はクローバー』と大きく変化することが分かった。今後は開花の少ない時期に対応できるよう、蜜源になる植物をエリアの植栽に採用するなどの取り組みも検討したい」と話す。
生き物の力を借りて環境について学び、都市の緑化や生物多様性の保全などネイチャーポジティブの実現に貢献するという都市養蜂活動について、松井さんは「この先の10年は得られたデータの共有や活用も進めていく。今年は5月10日の『世界ミツバチの日』に合わせた公開イベントの開催、秋には10周年を記念するイベントも企画したい」と話す。