
落語家の参遊亭遊助さんによる創作落語会「今、役立つ金融リテラシー向上セミナー~投資詐欺にあわないために~」が7月22日、日本橋三井ホール橋楽亭(中央区室町1)で開催された。主催は、マネックス証券(港区)、J-FLEC(室町2)。
同イベントの企画・運営は、マネックス証券で投資教育を担当する「マネックス・ユニバーシティ」。マネックスグループでは、2005年から全国の学校や企業で金融教育や研修を行ってきたが、個人投資家を対象にした落語会を行うのは今回が初めてとなる。
マネックス証券広報室の津川真秀さんは「近年、政府が推進する『貯蓄から投資へ』の政策や新NISA制度の普及を受け、投資初心者や若年層を中心に、金融リテラシー向上を目的とした投資教育を展開している。今回は、業界全体で対応が求められているホットなテーマとして『フィッシング詐欺』を題材とした落語をお願いした」と話す。
参遊亭遊助さんは、東京大学卒業後、横浜銀行に就職。アメリカへのMBA留学やALSOKタイ子会社社長を務めた経歴を持つ。落語家に転身後は、企業史を取材調査して創作する「落語 DE 社史」や地域で話題のテーマを盛り込んだ「地域落語」などに取り組んでいる。落語協会には属さず、独自路線を切り開き「ベンチャー落語家」を名乗る。
当日は募集人数を上回る41人が参加。はじめにJ-FLEC認定アドバイザーの髙木典子さんが登壇し、「金融リテラシー基礎セミナー」を行った後、参遊亭遊助さんの落語が始まった。創作落語「フィッシング詐欺」は、遊助さんが「詐欺グループの視点に立ったシナリオがおもしろいかもしれない」というアイデアで創作したという。
詐欺組織を初めて訪問した「新入社員」にオフィスツアーをしながら、詐欺組織の「事業部」を紹介して回る筋立てで、話の中に登場する「ミドルエイジ事業部」は投資詐欺を、「ロマンス事業部」は往年の恋愛詐欺、「医薬品事業部」は麻薬取引を扱う。「リクルート事業部」では受け子のスカウト、「システム部」ではSNS配信や詐欺サイト制作などが矢継ぎ早に登場する。
犯人たちが「証券会社は次々と対策してきて厄介だし、メディアもあれこれと余計な注意喚起しやがって」と悔しさをにじませる会話もあり、随所で笑いが起きていた。続いて、詐欺まがいの巧妙な値段交渉でつぼを手に入れようとする筋書きの古典落語「つぼ算」を上演し、締めくくった。
遊助さんは「今回の落語は、この講座のために創作した新作だが反応は上々。終わった後に観客から『役に立った』と声をかけていただいた」と笑顔を見せる。「聞いていてクスッとなったところ、なるほどと思ったところが身について、大切なお金のこと、問題となっている投資詐欺の事例や防止策に少しでもお役に立てればうれしい」とも。