社交クラブ「日本橋倶楽部」会員の平島博行さん(69)が5月11日、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼に向け日本橋を出発した。
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路はユネスコの世界遺産にも登録された1000年以上の歴史を持つ巡礼の道。平島さんはフランス北部のサン・ジャン・ピエ・ド・ポルからピレネー山脈の峠を越えてスペインに入り、キリスト教三大聖地の一つサンティアゴ・デ・コンポステーラへ至る800キロの道のりを徒歩で目指す。「日本国道路元標のある旅の起点。昔から東海道中もここから始まる」と日本橋をスタート地点に選んだ。
平島さんは日用品メーカー「ライオン」の元副社長で、今年3月に47年間勤めた同社を退社。数年前、ハリウッド女優シャーリー・マクレーンさんの体験記「カミーノ 魂の旅路」を読み、巡礼の旅を通じて変化していくマクレーンさんの心情描写に感銘を受けるとともに、チームワークが重んじられるサラリーマン生活を終えたとき、「誰の手も借りずに自分一人で何かを成し遂げる挑戦がしたい」と過酷な巡礼の旅を決意した。
出発に向けて、体力作りとスペイン語の勉強に励んできた。今年初め、箱根駅伝の片道ルート約100キロを1日20キロずつ5日間で歩いたことで自信をつけた。一人きりの旅路にも、持ち前の社交的な性格で「友達はすぐにできると思う」と平島さんは笑う。
事前に用意したのは、パリへの往復航空券だけ。具体的な旅程や宿泊先は決めず、荷物はリュックサックに寝袋と着替えを2そろえずつ入れた。50日以内の踏破を目指し、最終目的地では当初は同行を希望していたという妻が出迎える。
「震災の影響で、海外では日本に対する風評被害が起きている。旅を通じて多くの人と知り合い、日本の本当の現状を伝えたい」と平島さん。「ただ無事に歩ききることが目標」と一歩を踏み出す。