日本橋蛎殻町の「ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション」(中央区日本橋蛎殻町1)で1月8日、「南桂子生誕100年記念展 きのう小鳥にきいたこと-谷川俊太郎、蜂飼耳、文月悠光、三詩人の詩とともに-」が始まった。
1998年に開設され、銅版画家として世界的に活躍した浜口陽三の作品を収蔵・展示しする同館。銅版画の魅力を伝えるためのイベントや版画教室などを定期的に開いている。
南桂子は1911(明治44)年富山県高岡市に生まれ、幼少のころから絵画や詩に親しみ、上京後、小説家・壺井栄に師事して童話を学んだ。浜口陽三と出会ったことから銅版画家としての道を歩み始め、1953(昭和28)年以降、パリ、ブラジル、サンフランシスコに滞在しながら版画家として活躍。作風は、少女、花、鳥、樹などをモチーフにし、童話のワンシーンを思わせる詩情あふれる世界を緻密(ちみつ)な線で刻みつけ、優しく穏やかな色調と洗練された構成を特徴とする。作品はニューヨーク近代美術館に展示されたり、谷川俊太郎さんの詩集の挿絵や装丁などに使用されるなどしている。
今回の展示では、銅版画、油彩、ドローイングなど約60 点を展示。同館所蔵のスケッチブックから抽象画を初公開するのをはじめ、70年代製作の作品集や装画、南桂子自身が作集に掲載しようと思っていたという幻の作品画像、作業机やコレクションなど。南桂子と生前に交流のあった谷川俊太郎さんの詩編のほか、谷川さん推薦の若い詩人2人による新作も並ぶ。
同館で南桂子の展示が初めて行われたのは、没翌年の2005年。その展示を見た編集者からオファーがあり、作品集「bonheur(ボヌール)」の出版につながった。「新しい作品集は、世代を越えて南桂子ファンが増えるきっかけになった」と同館学芸員の神林菜穂子さん。「日本国内ではあまり知られていない才能豊かな銅版画家をもっと知ってもらいたい」と年一度、同展示を行っている。
2月20日には、詩人による朗読会(参加費2,700円)、3月6日には、画家・野見山暁治さんと作家・堀江俊幸さん、作品集の編集者・熊谷新子さんの対談(同1,100円)を開催。各回終了後、茶会が付く。定員は各50人。14時から。
同展は3月21日まで。期間中、併設のカフェでは南桂子の作品「池」をイメージして作られた「南佳子クッキーセット」(800円~900円、クッキー単品は300円)を提供する。