中部地方の伝統工芸の魅力と可能性を伝えるイベント「職手継祭(してつさい)2025 in 東京 ~会いに行こう、中部に継がれたホンモノの手仕事-ワザ-~」が12月2日、「KITTE」地下1階の東京シティアイ(千代田区丸の内2)で介さされた。主催は中部経済産業局(名古屋市中区)。
「職手継祭」は、伝統工芸の担い手が技を未来へ継承していくことをテーマにしたプロジェクト。独自の風土と文化を背景に技術を育んできた産地へ実際に足を運んでもらい、体験を通じて「ホンモノの魅力」を知ってもらうことを目的に展開する。
会場には中部の伝統工芸事業者12者が集まり、職人技が詰まった工芸品を展示した。和彫り彫金などの実演も行われ、来場者は仕上げの工程を間近で見学。九谷焼の絵付けなど、来場者が参加できる制作体験も用意され、伝統技術の奥深さに触れられる内容となった。
イベントは2部構成で、第1部では事業者向けセミナーを行った。JTBグローバルアシスタンス(品川区東品川2)ラグジュアリーマーケット推進ディレクターの大倉恭子さん、エピファニーワークス(富山県高岡市)社長で富山県整備観光社「水と匠」プロデューサーの林口砂里さんが登壇し、伝統工芸を「観光・文化資源」としてどう生かすかをテーマに講演。心に残る体験のつくり方や地域価値の共創について事例を紹介した。
第2部では、事業者が自社の工芸品や取り組みについて発表。石川県の協力により設置された「能登復興応援ブース」では、相次ぐ災害からの復興途上にある能登地域の現状と魅力が紹介され、来場者の関心を集めた。
会場内のトークセッションでは、俳優でライフスタイルブランド「momiji」クリエーティブディレクターの松山ケンイチさんが「momiji と拓く伝統工芸の未来」について話した。続いて、t.c.k.w(渋谷区)社長で伝統技術ディレクターの立川裕大さんが登壇し、「成長産業としての伝統工芸」をテーマに、技術継承とビジネスの両立に向けた視点を語った。
中部経済産業局産業部流通・サービス産業課長で商業復興室長の藤井隆史さんは「今回あえて東京で開催したのは、中部の伝統工芸の知名度をさらに高めるため。事業者にも地元で待つだけではなく、自ら外に出るきっかけにしてほしい」と話す。「富山をはじめ中部の産地を実際に訪れ、土地が持つ魅力を感じてもらえたら」と期待を寄せる。
出展者の一人で「岩月鬼瓦」(愛知県高浜市)の三州鬼瓦工芸品伝統工芸士・岩月久美さんは、神社仏閣の鬼瓦を手がける女性「鬼師」。会場では持ち運びしやすい小型鬼瓦を並べ、「海外の人は招き猫や家紋が入った鬼瓦に興味を持つ。家紋の意味を知り、お土産として購入していく方が多い」と笑顔を見せていた。