製紙メーカー「特種東海製紙」(中央区八重洲2)の東京本社内ショールーム「Pam東京」で4月2日、企画展「初版本と装丁 近代の文学、夏目漱石を中心に」が始まった。
装丁や挿絵を重視して造本にもこだわった夏目漱石の初版本は18点を展示
同社では、新製品の開発を目的に、紙の組織や劣化の過程などを解明する研究資料として、奈良時代から現代に至る紙資料を収蔵。同展では、製紙・印刷などの近代技術の導入で書籍の形態が洋本形式に変化した明治期から昭和初期にかけて活躍した作家の初版作品51点を展示する。
中でも、特に美術に関心を持ち、装丁や挿絵を重視して造本にもこだわった夏目漱石の作品18点を展示。1905(明治38)年刊行の処女作「吾輩ハ猫デアル」は、雑誌「ホトトギス」に掲載中に人気が出たため、連載途中に分冊され単行本化された作品。「こゝろ」は、漱石の弟子だった岩波茂雄たっての願いにより、岩波が立ち上げたばかりの当時の無名出版社「岩波書店」から、1914(大正3)年に刊行された。漱石自身が装丁を手掛け、現在、岩波文庫の漱石シリーズのカバーデザインは、この初版本のデザインにちなんでいる。
そのほか、森鴎外の「舞姫」や芥川龍之介の「羅生門」、尾崎紅葉の「金色夜叉」、島崎藤村の「破戒」、宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」など、漱石に影響を受けた後の作家が生んだ名作の初版本を展示する。
6月6日には、ブックデザイナー・祖父江慎さんよるセミナーを開催。漱石の本作りへのこだわりについて解説する(18時30分~)。入場無料。定員は80人で事前予約制(受け付け開始は5月15日)。
開館時間は10時~18時。土曜・日曜・祝日休館。6月29日まで。