東京駅八重洲口の「八重洲ブックセンター本店(以下、本店)」(中央区八重洲2)が3月31日、街区再開発計画に伴い44年続いた営業を一時停止する。
現在、「これからも続くー 八重洲ブックセンター ものがたり」と題したフィナーレイベントを開催している同店。首都圏を中心にチェーン9店舗を展開している。本店は旗艦店舗で、売り場面積約1,400坪を誇る都内有数の大型書店。
1978(昭和53)年完成の本店ビルは、鹿島建設(当時)の建築家、押野見邦英(おしのみ くにひで)さんが設計を担当した。船をイメージしたデザインで、八重洲地区最古参のランドマークの一つ。今回、建物は取り壊しとなるが、2028年同地に完成予定の超高層大規模複合ビル内に同規模での書店出店を計画している。
開店当時1978年9月の売り場面積約750坪、在庫数約20万点100万冊。これほどの書籍をそろえる大型店舗は当時の日本では珍しく、「マンモス書店」と称された。開店当初は連日売り場に入りきらないほどの人が押し寄せ、夜間人口の少ないオフィス街だった東京駅八重洲口かいわいの人の流れが一変したと話題になった。
土地柄、建築書や医学書の質問が多いため、書店員は勉強を続け、スキルを磨くことで対応してきたという。学びたい人たちのオアシスとしての役割を44年間果たした長年の実績から、ビジネス書の蔵書数や売り上げのランキングの信頼度が高く、新聞社やテレビ放送にもそのランキングが活用されている。
開店当時よりも売り場を拡張した現在は、地下1階から地上8階、約1,400坪の売り場面積。書籍は2022年時点で40万点100万冊。活字離れと言われて久しいとも聞くが、八重洲ブックセンター営業部マネジャーの内田俊明さんは、「数字は減っているかもしれないが、本が好きな人はいつも変わらずいる」と話す。
フィナーレイベント「これからも続く八重洲ブックセンターものがたり」の一環として、2階のエスカレーター横に設けられた寄せ書きコーナーには、「子どもの時に親に連れられて以来20年通っています」「上京するときは必ず寄っていた」「良い建物がなくなるのが寂しい」「再会を待っています」などの他、紙の両面に渡って本店と書き手との「ものがたり」をつづるメッセージも寄せられていた。
内田さんにとって印象深かった「ものがたり」は、東日本大震災の時。当時の店長の判断で、帰宅困難者に店舗の1階と地下を解放して一晩過ごせる場所を提供。喫茶「ティファニー(TIFFANY)」(現在はドトールコーヒーショップ)の食事を提供し、コンセントを貸し出した。遠く歩いて帰る人たちに向けては、1階入り口すぐの場所に店中の地図の在庫を集めて並べたという。内田さんは、「それから数日後、1年後、数年たってもお礼を告げに来店してくださるお客さまがいる。書店を超えて、開かれた店としての役割を果たせた出来事だと思っている」と振り返る。
本店跡の活用は「八重洲二丁目中地区市街地再開発」が引き継ぐ。地上43階・高さ約226メートルの約6,050坪の敷地に延べ床面積約117,975坪の超高層複合ビルが建つ予定。
内田さんは「建物がなくなることはとても寂しいが、八重洲ブックセンターがなくなるわけではなく、むしろ未来に、お客さまと本をつなげる役割は果たし続けて行きたい。八重洲で次に再開するまでは8店舗ある支店をぜひご利用いただけたら」と話す。
営業時間は10時~20時(日曜・祝日は19時30分まで)。最終営業日は3月31日。