三井不動産(中央区日本橋本町1)が1月29日、同社が船主で観光汽船興業(港区)が運航する旅客船「Nihonbashi e-LINER(イーライナー)」の概要を発表した。
日本橋を起点に水路を活用して街をつなぐ舟運(しゅううん)プロジェクト「&CRUISE(アンドクルーズ)」の一環。三井不動産によると、民間企業によるフル電動旅客船(EV船)の定期航路運用は国内初の試みという。同船は4月初旬に就航予定で、「日本橋船着場」(日本橋1)と「三井ショッピングパークアーバンドックららぽーと豊洲(以下、ららぽーと豊洲)」(江東区)間を片道20分で結ぶ。当初は一艘で運用し、4月下旬には二艘目の就航を見込む。
三重県伊勢市の造船所で建造された同船。設計・建造は太陽電機(千代田区)が担当し、名称は、Edo(江戸)、Experience(体験)、Expand(拡がり)、Emergency(有事対応)、Ecology(環境共生)の「5つの『E』」の意味を盛り込み名付けた。舟運で街の回遊性を向上させるとともに、平時・有事を問わず機能する都市インフラとしての役割も担う。
太陽電機マリンエンジニアリング部の竹内晃さんは「日本橋川は潮位によって水位が大きく変動するため、橋の下を通るには船高を極限まで低く抑える設計には苦労した」と振り返る。「徹底した低重心設計により、基本的には365日いつでも通航できるようになった。運用面で大きな強みになる」と話す。
船体の全長は約17メートル、乗客定員は60人。EV船ならではの静粛性と振動の少なさが特長。2艘体制で1日約30便の運航を予定する。最高出力は約8ノットで、川幅が狭いところは5ノット程度に減速して進む。竹内さんによると、船窓が低いため、より水面に近い視線で東京の水辺の景色を楽しめるという。
船内は、ペットボトル由来の内装資材を使った壁や、廃漁網を再利用したカーペットなどリサイクル素材を多く使う。フリーWi-Fiやコンセント電源も備えるほか、車いすやベビーカーが乗降しやすいようバリアフリー設計を採用した。
三井不動産によると、舟運プロジェクトの背景には、2040年代の首都高高架撤去を見据えた周辺エリアの再整備構想「日本橋リバーウォーク」があるという。2030年代に予定する築地市場跡地の再開発とも連携し、将来的には羽田方面への航路拡張も計画。日本橋、築地、豊洲の新旧3市場を水路でつなぐ「水都東京」が新たな姿として描いているという。
三井不動産日本橋街づくり推進部の市ノ澤伸幸さんは「水運で栄えた江戸のように人々の関心を再び水辺に向けて、空や水、風を感じながらの移動を日常に取り入れる。首都高速道路日本橋区間地下化に向けて、今から水辺利用を根付かせていきたい」と話す。