東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1)で9月19日、「もうひとつの江戸絵画 大津絵」展が始まった。
江戸初期より東海道の大津宿周辺で手軽な土産物として量産された「大津絵」。型紙や版木押しなどで手間を省き、手早く彩色して大衆が喜ぶ画題を安価で提供した。どの作品も作者不詳で、家族で分業しながら作られたと考えられている。仏画が中心だった画題も鬼や動物、七福神など親しみやすいものが増え、道歌が添えられるようになり一時期は100種類を超えたが、やがて「鬼の念仏」や「長刀(なぎなた)弁慶」、「藤娘」など十種に集約され護符化した。
分かりやすくユーモラスな絵柄が好まれて全国に広がるが、安価な実用品として扱われたために現在残っている数は少ない。鉄道の登場で東海道を往来する旅人も減り、名物土産としての需要も減少。明治以降廃れるが、文人画家の富岡鉄斎や洋画家の浅野忠、民藝運動の創始者・柳宗悦など審美眼を持つ文化人らに愛され、美術品として収集された。
これまで大津絵の展示は民俗・歴史資料として博物館や資料館で開催されることが多かったが、同展では美術品として捉え直し、狩野派でも琳派でもなく、浮世絵でもない「もうひとつの江戸絵画」として再認識したという。
会場では、洋画家小絲源太郎のコレクションを収蔵した笠間日動美術館や日本民藝館、一般収集家や一部フランスからも借り受けて約150作品を展示。4章の構成で、明治、大正、昭和の年代別に旧蔵家単位で展示している。
開館時間は10時~18時(金曜は20時、入館は閉館30分前まで)、月曜休館(11月2日は開館)。入館料は、一般=1,200円、高校・大学生=1,000円。チケットは日時指定の事前購入制で、ローソンで販売する。11月8日まで。