茅場町にあるギャラリー併設の写真・美術専門古書店「森岡書店」(中央区日本橋茅場町2、TEL 03-3249-3455)の誕生秘話を描いた単行本「荒野の古本屋」が3月6日、出版された。
晶文社による「就職しないで生きるには21シリーズ」の第2弾。アルバイト生活を経て、国内外の写真集・美術書マニアから支持される同店のオーナーになった1974(昭和49)年生まれの森岡督行さんが自らの開業エピソードをつづった。
アルバイトをしながら読書と散歩に明け暮れた日々の後、神保町の老舗古書店「一誠堂書店」で8年間の修業を経て起業。同書では、そのエピソードと店舗運営の実際など、趣味と実益を兼ねた「小商い」の現実を語る。
同店が入る1927(昭和2)年築の「第2井上ビル」と出合ったことが、森岡さんが自分の店を出す決意のきっかけになったという。ビルの雰囲気をそのまま生かすため、店内には什器を配置するのみで手を加えず、ランプやテーブルを対になるよう置いて二元論を表現するなど、オーナーならではのこだわりを込めた「100年後も通用する普遍的な空間」をつくり上げた。
タイトルは、開店当初、来店客がなく資金が尽きかけた際、森岡さんが荒(すさ)んだ心境で眺めた茅場町の景色を「荒野」と表現したことから。それでも、人との出会いに恵まれて営業を軌道に乗せ、今年7月1日で9年目を迎える。古い建築が次々と姿を消す茅場町で、築90年に近づく同ビルの歴史と共に、森岡さんは「自分の砦(とりで)」を守っていく。
価格は1,620円。営業時間は13時~20時。日曜定休。