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人形町のジビエ料理店「あまからくまから」 忍者熊「OSO18」の肉提供

「OSO18」肩肉の肉片

「OSO18」肩肉の肉片

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 人形町のジビエ料理店「あまからくまから」(中央区日本橋人形町3)が9月8日より、「忍者熊」と呼ばれ恐れられた雄のヒグマ「OSO(オソ)18」の肉を「カムイオハウ(アイヌ語で熊鍋の意)」と「炭火焼き」で提供している。

人形町のジビエ料理店「あまからくまから」

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 「OSO18」の名は、初めて乳牛が襲われた標茶町オソツベツの放牧地で発見された前足の足跡の幅が18センチだったことにちなむ。北海道東部の標茶(しべちゃ)町、厚岸(あっけし)町は特に被害が甚大で、2019年から今年にかけて計66頭の家畜が被害に遭った。

 4年間、人目に触れることもなく、わなにもかからず、監視カメラにも映像がほとんど残らないことから「忍者グマ」の異名もあった。今年に入って行動範囲がさらに拡大したことで地元は安心して営農できず、特別対策班を設置するなどして警戒を続けていた。

7月30日に駆除されたオソは、推定14歳。体調2メートル10センチ、前足幅20センチ、推定体重330キロ。個体としては大きい方だが、一般的なヒグマの成獣と変わらなかった。

 オーナーシェフの林育夫さんは「当初はオソとは知らずに仕入れて提供していた」と話す。エゾシカの仕入れ先の取引業者から「300キロ超えのヒグマが駆除された」と連絡を受け、「巨体でも柔らかい」とされるもも内を「炭火焼き」用に1頭分、肩肉を「オハウ(鍋)」用に、計7キロを注文。後日、この取引業者から電話があり、「先日の肉はオソだった」と知らされたという。

 林さんによると、ハンターは鹿の駆除が専門でヒグマを駆除したのは今回が初めて。捕獲直後は気づかなかったが、数日後に「オソだったのでは」と思い当たり、釧路町にDNA検査を依頼したという。「もし検査に出さなかったら、識別されないまま処分され、オソは消えたまま警戒だけが続けられていたかもしれない」という。

 同店では9月7日、アイヌの専門家を招き、店の安全と商売繁盛を祈るための儀式「チノセミ」を執り行い、オソの鎮魂を祈り、肉を清めたうえで翌日から料理の提供を再開している。ジビエを初めて食べる客からは「想像していたより柔らかくて臭みがない」という声が聞かれるという。

 「熊は臭みがあるイメージが強いようだが、本来は食べやすいもの」と林さん。「ジビエは使う部位、調理の仕方、処理がきちんとできているかが肝心。血抜き、内臓処理など一刻を争う処理が現地でちゃんとされていればおいしいはず」とも。

 林さんによれば、アイヌの文化ではヒグマを「キンカムイ」と呼び、自分たちの元に肉や皮を恵んでくれる山の神として感謝し敬う文化があるという。一方、人を襲った「ウェンカムイ(悪い神)」は処分される。林さんは「命を頂くことは残酷な面もあるが、今回のようなきっかけで、いつもは考えない『命』の尊さについて考える面もある。それはジビエの良さでもある」と話していた。

 営業時間は17時30分~23時30分。日曜・祝日定休。オソの提供は9月末まで(要予約)。

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